舞台となる太陽系はマサ・キティ星系という。数千年前に人類が移民し、その後に起こった災害によりいったん文明が崩壊、現在、地球とは連絡が断絶している。この太陽系のみで閉じた生存圏を構成している。
ここは、ふたつの太陽系による二重太陽系である。α太陽系(主星αを太陽とする)のまわりをβ太陽系(伴星βを太陽とする)が千年の周期で楕円軌道を回っている。ふたつの太陽系にはそれぞれ地球型の居住可能惑星が存在する。αの第三惑星アル・ヴェルガスと、βの第二惑星ベルゼイオンである。いまふたつの太陽系は数世紀ぶりに接近しようとしていた。ふたつの太陽の接近は、それぞれの太陽が伴う有人惑星に天変地異をもたらす。キティ人(キティアン)たちは、〈夏〉または〈接近期〉と呼ぶ。特にベルゼイオンは、災害後、その大人口を養えなくなるほどの大打撃を受ける。かくて、ベルゼイオン側は、〈夏〉の到来前に、もうひとつの有人惑星への避難民移動計画を画策した。ふたつの惑星間で戦争が勃発することになる。
また、この星系には先史文明の足跡が残っている。不安定な二重太陽系下にふたつの居住可能惑星が存在することはこの先史文明のテクノロジーによるものと推察される。ベルゼイオンでは多くの先史文明の遺跡が発掘されているが、政府・軍部が秘匿政策によって、発掘されたオーバー・テクノロジーを独占している。オーバー・テクノロジーを利用したハード・ウェアが戦略・戦術に影響を及ぼし、戦争の趨勢を左右することにもなる。
|

マサ・キティ星系の主星α。四つの惑星を持つ。この太陽を、アル・ヴェルガスに棲むキティ人類(キティアン)は、俗称として、「アル・カームイ」と呼んでいる。当該αを太陽とする星系のことを、便宜上「α太陽系」と呼称する。
・第一惑星アル・ファーソン……楕円軌道を描く、岩塊のような矮小な小惑星。
・第二惑星アル・ディマリ………大気を持つが灼熱の世界で、居住には適さない。
・第三惑星アル・ヴェルガス……キティ人類(キティアン)が棲む地球型の惑星。
・第四惑星アル・ガリータ………アル・ヴェルガスの半分ほどの直径の惑星。希薄な大気と極寒の世界。
|

マサ・キティ星系の主星αの第三惑星がキティ人類(キティアン)の棲むアル・ヴェルガスである。β星系のベルゼイオンと異なり、十八の国家が乱立しており、惑星、衛星を問わず常に小競り合いを繰り返す状態にある。宇宙艦隊を擁する代表的な大国は、サイゴーン、クルセイガ、メッサージュ、アクアランド。
|

マサ・キティ星系の主星αの第四惑星。薄い大気で、極寒の世界だが、アル・ヴェルガスの三大国サイゴーン、クルセイガ、メッサージュが、宇宙開発競争で凌ぎを削り、この地にドーム・地下都市型の殖民基地を建造している。「接近大戦」の序盤において、戦端が開かれた場所のひとつであり、結果、侵略艦隊(ベルゼイオン軍)の橋頭堡として、占領下に置かれる。
|

α太陽系の第三惑星アル・ヴェルガスの第一衛星のこと。三大国サイゴーン、クルセイガ、メッサージュが、宇宙開発競争で凌ぎを削り、この地にドーム・地下都市型の殖民基地を建造している。「接近大戦」の序盤において、戦端が開かれた場所のひとつであり、結果、侵略艦隊(ベルゼイオン軍)の橋頭堡として、占領下に置かれる。さらに新兵器、質量射出装置(マス・ドライバー)が建造され、隕石爆弾による攻撃がアル・ヴェルガル地表へとなされる。この衛星を巡っての戦いが、「接近大戦」の戦局を大きく左右することになる。
|
α太陽系の第三惑星アル・ヴェルガスの第二衛星のこと。公式には未開発の小型天体。実際には、メッサージュ宇宙軍の秘匿基地があり、〈狐〉艦隊と呼ばれる主力艦隊の母港となっている。メッサージュ軍は当地を拠点に侵略軍の補給線破壊作戦を遂行する。
|
α太陽系の第三惑星アル・ヴェルガスの第三衛星のこと。岩塊といったほうが相応しい矮小な天体。
|

アル・ヴェルガス一の大国。北半球に浮かぶメイスーンと呼ばれる大陸の七割以上を国土とする。軍事大国であり、「衛星軌道軍」と呼称される宇宙軍と宇宙艦隊を有する。国家財政が逼迫し、さまざまな社会的病理面が深刻な状態。侵略軍(ベルゼイオン)の攻撃目標とされる。
|
サイゴーンの首都。一〇〇〇万弱の市民が棲む。自然発生的に拡大した大都市であり、都市整備計画が追いついていない。官庁街、ビジネス街、高級住宅街からスラム街、ゴーストタウンなどが渾然一体となって存在する。
|
サイゴーンの中央部に位置する広大無辺な平野。侵略軍(ベルゼイオン)の降下兵団が降下したところ。同兵団は、首都陥落を目指し、西進するが、サイゴーン陸軍はガイガンティス山脈を背にして最終防衛線を敷く。「ガイガンディス戦線」と呼ばれる、地上における両軍の最前線となって、膠着状態に陥る。「接近大戦」の命運を左右する場所となる。
|
ガイガンディス平野中央部に位置する大都市。侵略軍(ベルゼイオン)の降下兵団の降下地点の近辺にあり、緒戦で占領下に置かれる。無防備都市宣言し、市街は破壊を免れている。郊外に軍事基地があったが、マス・ドライバー攻撃で破壊されている。
|
サイゴーン西海岸に位置する大都市。軍港があったが、緒戦においてマス・ドライバー攻撃で破壊されている。
|

アル・ヴェルガス第二の大国。南北に長いファスラシアと呼ばれる大陸を国土をする。サイゴーンの隣国であると同時に敵対国。社会主義的独裁国家で軍事大国。「クルセイガ革命」なる革命で現体制成立。サイゴーンに対する対抗意識と敵愾心から侵略軍(ベルゼイオン)と極秘交渉を行い秘密同盟を結ぶ。宇宙艦隊所有。
|
メイスーンとファスラシアという二大大陸が先細りした先端の半島に挟まれた海峡。二大超大国サイゴーンとクルセイガの国境でもあり、最前線。周辺海域には豊富な海底資源が埋蔵されていることもあり、過去、五度にわたって、両国の局地紛争の舞台となっている。
|

アル・ヴェルガス第三の大国。サイゴーンを圧迫するほどの経済大国。守銭奴として他国から恨まれている。かつてサイゴーンと「北南大戦」という戦争を経験。現在は友好国であり、軍事同盟を結んでいる。国土は南半球に浮かぶ小大陸で大陸国家を形成している。小規模だが精強な宇宙艦隊を有しており、寡兵でありながら一本化された戦略・戦術に徹して、侵略軍(ベルゼイオン)を苦境に追い込む。
|
メッサージュの首都。八〇〇万人の市民を有する大都市。世界経済の中心地のひとつ。
|
メッサージュ大陸の最北端に位置する半島。この地に宇宙軍の国内最大の基地がある。
|

楕円軌道で主星αを巡る、伴星β。ふたつある惑星のうち、第二惑星ベルゼイオンにキティ人類(キティアン)が棲む。第一惑星プロディオンは居住に適さない。この太陽を、ベルゼイオンに棲むキティ人類(キティアン)は、俗称として、「ソウル」と呼んでいる。当該βを太陽とする星系のことを、便宜上「β太陽系」と呼称する。
|

楕円軌道で主星αを巡る、伴星βのふたつある惑星のうち、第二惑星。キティ人類(キティアン)が棲む。ベルゼイオンは、常に同じ面を太陽にむけて公転している。惑星統一国家を形成しており、ジェニファー・クローゼンヴァーグ大統領の下で統一され、〈夏〉を生き延びる政策の一環として、被害の少ないとされるα星系へと侵攻する……。
|
惑星国家ベルゼイオンの首都。ジェニファー・クローゼンヴァーグ大統領が執務を執る大統領府を中心として放射状路が造られており、緑地地帯〔グリーン・ベルト〕や人工湖が配され、周囲に置かれた衛星都市とはアウトバーンや地下鉄で結ばれるなど、都市整備計画に基づき建造された計画都市。
・ローゼイン……………大統領府の傍、都市の中心部に配置された人工湖。湖畔は公園となっており、市民の憩いの場となっている。
・フリードマン街………衛星都市のひとつ。上流階級〔アッパー・クラス〕のなかでも、惑星の政治経済に深く関わり、軍産複合体を形成している名門の資産家が大邸宅を構える超高級住宅街。家同士は、政略結婚により多重に姻戚関係を結んで、一種の貴族と化している。街全体が最新の警備システムを完備した障壁に囲まれており、常駐警備員のいる検問所は、IDを持った住人でないと通過できない。当地に住む特権階級たちをマスコミは「フリードマン族(フリードマン・ファミリーズ)」と呼んで揶揄している。大統領ジェニファー・クローゼンヴァーグの生家クローゼンヴァーグ家は、特権階級の中核を成す名門。
・リゼッタ街……………衛星都市のひとつ。惑星最大規模を誇る、星立の教育機関かつエリート養成所であるリゼッタ・アカデミーが置かれた教育都市。
・アドバーニウス街……衛星都市のひとつ。宙軍の拠点のひとつ。タロットリードと呼ばれる宙港が隣接し、軍令部の支部、軍病院、下士官養成学校、軍宿舎などが林立する。
・コンスタンニウス街…首都中核部、大統領府に隣接する扇型地区。惑星最大のショッピングモールがあるなど、歓楽街。
|
惑星ベルゼイオンの〈夜半球〉にある小さな街。最初に発見された先史文明の遺跡がある。当該遺跡からは、〈石(ジュエリー)〉や、「文書」と呼ばれる記憶媒体、「地平」という文学作品(作者:ハーフェンパーマー)などが発掘されている。
|
惑星ベルゼイオンの〈夜半球〉にある街。「ロースター神殿」と呼ばれる惑星最大規模の先史文明の遺跡がある。〈夜〉の観光地としても有名で、氷河や星空など景観を楽しむためのホテル、資産家の別荘が多く建つ。
|
